非大阪人のための大阪の歩き方
98.03.09〜03.11扇町ミュージアムスクエア
Dr.Donald Doneinstein

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上級編

ボケとつっこみ

大阪人は全員日常会話で漫才をしている。そう思われているようですが、その通りです。つまりボケと突っ込みです。これも大阪人には自覚している人としていない人がいますが、まあ、普通ボケられたらつっこむのがマナーですね。これはこんにちわと挨拶されて黙ってたら失礼だと、それくらいのレベルの話でしょう。まさにマナーです。人間関係を円滑にするためのルールといってもいい。相手のつっこみが期待できるから、安心してボケられる。そういう信頼関係の上になりたっているコミュニケーション手段なわけです。

ですから大阪では、ボケられたらつっこむのはもちろんなんですが、相手がつっこんでくれると信頼している以上、ことあるごとにボケなくてはなりません。ですから大阪人は、よくボケをかますわけです。ところが大阪以外の文化ではボケっぱなしというのがギャグの基本ですから、他府県人は大阪人がボケても、ただ笑ってあげるだけですませる人がひじょうに多い。これは大変危険です。たとえばこういう例を見てみましょう。

A OMSいうたら扇町ミュージカルスッポンポンの略やんなあ。
B (笑っている)

これではどこがいけないかというと、ボケた方の人が、「これ笑って貰ってるけど単にスッポンポンて言葉に笑ってるだけかもしれない、OMSが本当にそういう意味だと思ってるんじゃないか。教えてあげなくていいのだろうか」と不安にかられるわけです。相手を安心させて、良好な人間関係を保つためにはここで正しくつっこむ必要があります。もっとひどい例としてはこういうのもあります。

A OMSいうたら扇町ミュージカルスッポンポンの略やんなあ。
B (首を横に振る)

相手がぼけたことをまったく理解せず、それどころか、まちがったことを言っていると思っています。これは失礼も甚だしいですね。相手の知性・教養を疑っているわけです。これは、もともとつっこみどころかボケの文化もない、北国の人におおい間違いだと言われています。気をつけてください。正しい例も見ておきましょう。

A OMSいうたら扇町ミュージカルスッポンポンの略やんなあ。
B (つっこむ)

はいこれでやっと初歩的なつっこみができたわけです。もちろんただつっこむだけでは十分とは言えません。ボケつっこみ、ノリつっこみ、さらにボケの上塗りなどいろいろありますが、それはおいおい身につけていくとして、とりあえずつっこむ。毎日練習してください。

しかし時には、相手がボケていたのではなく、本当に間違えていた。そういうこともあります。本当に、ミュージカルスッポンポンだと思っていた、という場合。そういうときにも気にせずに「なんでやねーん」とつっこんで上げてください。なぜならそれによって、「あ、なんか俺、間違ってたのか。でもギャグだったことにできてよかった」と、相手を救ってあげられる。突っ込みは人を救うこともできるんです。すばらしいですね。次。

ルール

大阪人はルールを守らない。これは元はと言えば、大阪が商人の街で、江戸時代も商業都市として保護され、商人による自治が行われてきた。だからお上の言うことにはさからっても平気だと。むしろ規則に縛られずに自分の才覚で動かないと商売にならない。そうするのが美徳だとされてきたわけです。それに対して、東京なりほとんどの地方都市は武士の社会でした。武士の中でも、武士に支配された農民の中でも規則に従うのが美徳とされてきたんです。そんな封建社会をルーツに持つ他府県人の我々が、いきなり治外法権都市大阪に来ると困ってしまいます。というよりも、アイデンティティが崩壊します。自分が生まれてこのかた身につけてきたルールが通用しないんですから。

ここでは以前歩行者免許講習会でお話ししたことの中から、やはり典型的な例をいくつか取り上げます。まず横断歩道の渡り方。そんなことは小学校でならったといいたいところですが、小学校で教えることは間違っています。車やバイクの免許、持ってない方いますか?・・・はいあなた、信号の赤は何?・・・では青は?・・・そうですね。そうならいました。「赤は止まれ。青はすすめ」これが大間違いです。車の免許を持っている人は知っていますね。これはちゃんとした道路交通法の話ですよ。青信号はどういう意味か。教習所ではどう習いますか。はい知っている人。はいあなた。・・・そうですね青は「安全を確認したうえで、通行してもよい」です。してもよい!だから、青でも安全は確認しなきゃいけないんです。なぜなら、携帯でしゃべりながら右折してくる車や、床に落ちたCDを拾いながら左折してくる車がうじゃうじゃいるからです。それもちろん車が悪いんですよ。車が悪いんですが、死ぬのはあなた方なんです。自分の身は自分で守ってください。そして赤信号も止まれじゃありません!「安全を確認したうえで、通行してもよい」はい、青と一緒です。そんなこと言ったら信号いらない?いえいえ。大切なのは信号が赤だろうと青だろうと、安全を確認して渡るということなんです。大阪の人は赤信号でも平気で渡ると世の中では言われていますけれども、ちゃんとした大阪人は安全を確認してから、赤信号を渡ります。そこを見習ってください。

それから電車の乗り方。はい、電車に乗るときのルールは?・・・そうです。降りる人が済んでから。そうです。それは守らないといけません。降りる人がまだいるのに乗り始めると結局すごく時間がかかります。せっかく降りようとしているのに乗ってこられたら降りられなくなって、そのせいで乗る方も乗れなくなって、なんかもうぐちゃぐちゃになって時間かかります。大阪人いらちなのに、これは許せません。ですから大阪人といえど、電車にのるときはちゃんと並びます。並んでおいて、電車がきたら、左右に分かれます。このときに、横から入る人、いますね。あれはいけません。あれを入れてしまう人が悪い。並んでたんだから、人が横から来ようが何しようが前の人との間をあけずにさっと動く。ね。そして電車から人が降りてくる。ここがポイントです。左右2列に分かれますが、は、ちょっと出てきてください。・・・・・・・・・はい、2人並んで。はい白線の内側で待ってください。電車来ました。止まります。はい左右に分かれて!・・・人が降ります。降ります。まだ降りてますが、こっち側が空いてます。さあ、あなたどうしますか。乗りますね。乗ります。するとあなたも続けて、乗ります。あなた乗れない。あなたも乗れない。はい、こっちの列の人みんな座れたのに、こっちの人たち誰も座れませんでした。あなたなんか先頭に並んでたのに座れませんでした。はい、これは誰が悪いですか。・・・そうですね!この人です!こっちの列が乗り始めたときにすかさず乗り込んでいれば、座れたかもしれないんです。電車がくるまでちゃんと並んで待っていたのに、のろまな先頭の人のせいで座れなかったこの人の立場でものを考えましょう。わかりましたか。大阪で電車を待つとき、先頭に並んだらそれだけの覚悟をしておいてください。

東京コンプレックス

さて、私、大阪人を検証していくうちに、ひとつの共通した特徴に気がつきました。それは大阪人はいいことでも悪いことでも個性だととらえて自分をいいように思いたがる、ということです。とくに東京との対比でそれは言えます。東京はべつにそう思ってないはずなんですが、大阪は東京をライバル視しています。日本で断然都会といえば東京ですが、大阪もそれに肩を並べる存在だと。確かに過去のかなりの期間、そうだったことはあるんですが、今は見る影もありません。大阪の人はそれを直視するのを怖がっているようにも見えます。大阪人以外の日本人は、日本で都会といえば、東京。そして北海道には札幌、東北には仙台、中部地方には名古屋、関西には大阪、中国地方には岡山・広島、九州には福岡。というふうに考えている。しかし大阪の人だけが、日本は東と西に分かれていて、東の中心は東京、西の中心は大阪、そんなふうに考えている。そう言う面もありますよ。大阪が西日本全体の中心になっている部分もありますが、そうでない面もはるかに多いんです。それを大阪の人は自覚していない。何かというと東京には負けていないと言いたがる。大阪人が個性を主張するとき、東京コンプレックスのようなものを感じてしまうのは私だけでしょうか。

その現れの一つがここにあります。これは去年公共広告機構が作ったポスターなんですが、横山やすしさんをキャラクターに起用して、大阪が日本のワースト記録を持っているものがこんなにあると訴えています。それは、「ひったくり」「自動車盗難」「暴走族の団体数」「自動車のフライング発車」ちなみにこれは世界一だそうです。それから「大気中のダイオキシン濃度」「一級河川の水質」「カラオケ著作権料の契約率」などもあります。私はこれは非常に危険なポスターだと思います。果たしてこれを見て、「ああ、大阪はこんなにひどい街だったのか、すこしでもよくしていこう」と思う人がどれだけいるか。それよりは「よっしゃあ、何や知らんけど一番や」と思う人の方が多いのではないか。逆効果なんじゃないでしょうか。さらに!・・・実は私、そんなこと公共広告機構の人もわかってたんじゃないかと思うんです。それでもなぜこれを作ったか。それは、これだけは東京に勝ってるぞと。何しろ世界一まで入ってるんだから。そのうえ仮に東京にはワースト1がもっとたくさんあったとしても、東京はそれを自慢したりなんかしない。やったもんがちだと。そこまで計算していたんじゃないでしょうか。大阪人、こういう知恵は働きます。

大阪は関西の中心?

ところでさきほど私、関西の中心が大阪といいましたが、果たしてそうでしょうか。もちろん地理的にはそうですよ。関西の地図を書いてみますと、面白いことに気づきます。どなたか、関西生まれの関西育ちの方、いらっしゃいますか。はい、あなた。生まれ育ちはどこ。はい。そうですか。では関西の地図、書いていただけないでしょうか。・・・はい、あなたお願いします。・・・・・・(いろいろ)・・・・・・。とにかく、関西には兵庫・京都・滋賀・奈良・和歌山の各府県がありますよね。その県庁所在地がどこにあるか。書いてください。・・・・・・はい、もう結構です。ありがとうございました。・・・・・・はい。神戸、京都、大津、奈良、和歌山。これ、何と全部、大阪寄り。そうですね。大阪市だけが、ほぼ自分のところのの中心に位置していると言えます。これ、もしも他の県庁所在地も同じように各県の真ん中に持ってきたらどうなるか。どこもかしこも山の中ですね。滋賀だけは湖の底ですが。三重?いいじゃないですか。三重の話は。そういうわけで地理的には大阪が中心だと。にも関わらず。大阪以外の関西人あんまり自分とこのリーダーが大阪だとは思ってませんね。とくに京都と神戸。どっちも自分とこが一番だと思ってます。もう、関西バラバラです。関西が大阪中心にまとまってると思ったら大間違いです。まんなかへんにあって便利なんでみんな大阪利用しますけどね。なんやかんや。でも心はバラバラです。悲しいですね、なんか現代のお父さんみたいな存在です。関西国際空港というのも、大阪がなんとか自分が関西の中心だとアピールしたくて名付けたんじゃないかと思います。またある人に言わせると、兵庫県伊丹市にある伊丹空港を大阪国際空港と名乗らせていたくせに、大阪府泉州沖のあれは関西国際空港。もはや自分で大阪と名乗るパワーもない。関西のご機嫌をとっているんじゃないかと、そんな意見もあります。いずれにしても大阪のリーダーシップの失墜を物語るような名前ですね。もはや大阪にかつてのゴリ押しパワーはないんでしょうか。

これからどうすればいいか

そうだとすると。我々はこの先どうしたらいいのでしょう。大阪にいるとはいえ、我々他府県人にできることはあまりに少ないと思うかも知れませんが、幸い我々は大阪に生まれ育った人に比べればグローバルな視点を持っています。客観的に大阪を見つめることができる。冷静に今の大阪を見つめ、そして大阪がよりよい未来を夢見る手伝いをすることができるんじゃないでしょうか。そしてネイティブの大阪人にも教えて上げましょう。東京だとか大阪だとかつまらないこだわりを捨て、本当に自分たちが幸せになるためにはどうしたらいいか、それを考えて行かなきゃいかないと。しかし、人間初心を忘れやすいものです。いくら固く決心しても、月日が経てばちょっとしたことでそれが揺らいでいく。悲しいことです。それでも、くじけそうなときに励ましてくれる、いつも見守ってくれる存在があれば、人は勇気づけられるのではないでしょうか。

たとえばこだわりを捨てて東京を見習ってみましょう。見守ってくれる存在。東京には東京タワーがあります。未来を夢見て東京に出ていった人は最初に東京タワーに誓います。夢が叶うまでは、ふるさとへは帰らないと。そして、恋に落ちても、夜の東京タワーでデートします。万一夢破れ、故郷に帰るときも、東京タワーに向かって、「さよなら、東京」とかなんとかつぶやくわけです。うらやましいですね。東京の人に、東京のシンボルとなる建物は何?と聞けばまず10人中9人までが東京タワーと答えるでしょう。ひょっとすると、東京が大阪を遙かに凌駕する大都会になり得たのも、東京タワーの力かもしれません。大阪にも、何かあれに変わるものが必要なんじゃないか。そこで、こんな劇をつくってみました。ごらんください。

劇(約40分)

劇が終わって

はい。いかがでしたでしょうか、素晴らしいファンタジーでしたね。本当に大阪にあのとおりのものができたらどんなに素晴らしいでしょう。ちなみに梅田スカイビルは高さ170メートル。太陽の塔が60メートルなので、合わせると230メートル。東京タワーほどじゃありませんが、結構高さあります。どうですか。大阪城公園にあれを。それが無理でもせめてスカイビルの上に太陽の塔を移築する。これいいですね。さあ、明日から皆さんスカイビルを見てもなんか上の方が物足りない。そう思ってしまうことうけあいです。そしてぜひ、千里の丘に彼を訪ねてやってください。エキスポランドに出かけたら、彼の足元まで行ってやってください。一人でずっと立ってます。そして、耳を傾けると彼のつぶやきが聞こえてきます。「せめて、大阪市内に連れてってくれ」と。いつか私がこの「新・スカイ太陽の梅田シティ塔」かなんかそんな名前のプロジェクトの署名を集めるときはぜひご協力いただきたいと思います。しかしやはりあの空中庭園の穴は最初からそのために空いているんじゃないかと、私は思うんですがね。

さて。今日のプログラムはここまでなんですが、皆さん少しでも大阪人としての自覚が芽生えましたか。そして未来へ向けて自分が何をするべきか。未来の大阪のために何ができるのか。これは大阪に限りませんよ。人間として生きていく以上、自分の住む場所をよくしていくことはそのまま自分をよくしていくことにつながるわけですから。住みにくいとか、いやな土地だとか言ってたって始まらないでしょう。何かを明日から始めてください。

最後に

ありがとうございました。はい。それでは皆さん。お帰りいただいて結構なんですが、その前に。レポートを提出していただきます。これは上の広い方のA欄に記入してください。枠からはみ出ないように。裏とか使わないでください。後で読む気しなくなりますから。たくさん書く人は最初から小さい字で書いてください。課題は、幸せな大阪とはどんな大阪。どういうアプローチでもいいです。あなたにがまたあなたの子供達が幸せに暮らせる大阪はどんなところか。今のままがいいのかよくないのか。よくないなら、どこをどう変えるべきなのか。町並みを変えるという手もあります。情緒のない建物を全部壊してドイツ風の町並みにするとか。パリにするとか。わたし本当にそれを実行したらいいと思っている。そしてただ、私と違って、ネイティブの方は自分の生まれ育った家や街なみを全部壊す勇気があるか。また大阪という名前を変えようという人もいるでしょう。じゃあ、何という名前にするか。大阪をやめて・・・Oの次だから「P阪」?それ地名かどうかわかりませんね。ことばを変えようと言う人もいるでしょう。しかし標準語にするのは嫌だ。じゃあ、思い切って英語にする?大阪弁もともと英語に似ているという人もいます。「そうやんけー」とかね。私はドイツ語に似ていると思います。「そうでんねん」とかね、「いきまっせ」とかね。でもドイツ語はむづかしいからいやですね。ま、いろいろ改革の方法はあります。それを皆さんなりに考えてください。そして、考える課程で何か大切なものを見つけていただけたらと、願っています。では、制限時間は15分。もちろん早く終わった人は先に帰っていただいて結構です。その際、レポート用紙はお配りしてあるボードにつけて、お貸しした筆記用具と一緒にその場に置いて帰ってください。こちらで回収します。本日はご苦労さまでした。



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